なぜ、今、ブランディングが注目されるようになったのか?5つの理由。
- Shigehiro Moriya
- 4月13日
- 読了時間: 11分
かつては「良い商品をつくれば売れる」時代でしたが、時代は大きく変わり、今は、企業や商品の“スペック”ではなく、“人格”“姿勢”“意味”が重視されるようになっています。
この記事では、「なぜ今、ブランディングがこれほど注目されているのか?」を5つの理由から掘り下げます。
目次
1. モノがあふれ、差がつきにくい

「スペックではなく、印象で選ばれる」時代の到来
昔は「品質が高い」「値段が安い」ことが、圧倒的な差別化ポイントでした。
でも今は、どの会社の商品も一定のクオリティがあり、致命的に悪いものはほとんど存在しません。製造技術、流通、マーケティング手法が均質化したことで、“ハズレ”が減ったのです。その結果、消費者はこんな状態に置かれています。
「どれを選んでもまあまあ良い。だったら、自分に“合う”ものを選ぼう。」
この“合う”という感覚は、もはや「性能の高さ」ではなく「共感できる雰囲気」「価値観」と言えないでしょうか? そうなると、消費者や顧客が抱くブランドに対する印象=ブランドイメージが重要になってきます。

同じコーヒーを飲むなら「どこで飲むか?」が重要になる
コンビニでも、カフェでも、家でも、美味しいコーヒーは手に入ります。でも、「ブルーボトルコーヒーで飲みたい」「スターバックスのあの空気が好き」となるのは、もはや、コーヒーの味以上に“その場の意味”や“ブランドの美意識”に惹かれている証拠です。
これは“消費”が“体験”に変わってきていることの象徴でもあります。
2.機能ではなく“意味”が求められているから

ブランドの印象が選ばれる決め手になる瞬間
ある調査によると、消費者の購買決定は感情の影響はロジックよりも60%以上という結果が出てます。つまり、「なんか、こっちのほうが信頼できそう」「なんとなく好き」という印象が、実はスペック比較よりも強く作用しているのです。
機能で選ぶのではなく、「このブランドは、自分にとってどういう意味があるか?」で選ぶ。
人々は商品そのものよりも、「それを選ぶ意味」を求めるようになっています。
「この服、かっこいいから」 → 「このブランドの考え方が好き」
「このアプリ、便利だから」 → 「このサービスは社会的意義があるから使いたい」

競争優位は「差別化」から「指名買い」へ
かつてのマーケティング戦略は「差別化をどう作るか?」がメインテーマでした。でも今は、「比較の土俵にすら上がらない=最初からこのブランドを選ぶ」という状態=指名買いが理想になっています。
「あの会社が作ってるなら、もうそれでいいよね」
「このブランド、なんか自分に合ってる」
→ ここにはロジックを超えた“信頼”と“共感”があります。

ブランディングは「意味の設計」である
ブランディングとは、「このブランドは、どんな考えを持ち、どういう世界を目指しているか」という“意味づけ”を、商品やサービスを通じて伝える営みです。
単に買ってもらうのではなく、「共鳴してもらう」
単に良い商品ではなく、「“なぜ”それを作ったのか」を語る
単なる便利ではなく、「その商品を選ぶことの物語」を提供する
この“意味”を言語化し、デザインし、体験として届けるのが、ブランディングです。
“ブランドの印象をデザインする”=ブランディングが求められているのです。
3. SNS時代は「共感されるブランド」が強い

情報の信頼源が“広告”から“共感”へシフト
かつて、情報はマスメディアから与えられるものでした。広告もテレビ・新聞・雑誌など、企業が一方的に発信するものであり、受け手は“受動的”だったのです。
しかしSNSの普及によって、情報の主導権は完全にユーザーに移りました。
誰かの口コミを信じる
友人が紹介していたブランドに興味を持つ
インフルエンサーの発言で行動が変わる
つまり今は、「企業が何を言うか」よりも「誰がそれを語るか」が価値になる時代。
企業のブランドが「語られるに値する存在」にならなければ、生き残れないのです。

共感は“企業の存在理由”を伝えたときに生まれる
SNSで共感されるブランドには、共通点があります。それは──
「何を売っているか」よりも、「なぜそれをやっているのか」を語っている。
たとえば:
スターバックスが「コーヒー」ではなく「居場所」や「繋がり」を語る
Patagoniaが「服」ではなく「地球を守る」という思想を訴える
この“WHY”を真摯に発信し続けているから、ユーザーはただのフォロワーではなく、ブランドの“仲間”になるのです。

SNSは“感情の共鳴装置”である
SNSは、理屈で動く場所ではありません。感情で動く場所です。
「それ、わかる!」
「そういう姿勢、好き」
「やっぱこの会社、信用できる」
こうした“好き”や“共感”の積み重ねこそが、SNS上のブランド資産になります。
つまり、“正しい”より“感じがいい”が勝つ。共感されるブランドは、広告費をかけずともファンによって広がるブランドになるのです。

共感を得るには、“らしさ”の一貫性が必要
人が人に共感するのと同じで、ブランドにも一貫した人格が必要です。
言葉の選び方(コピーやトーン)
見た目の印象(デザインやロゴ)
発信内容(価値観や哲学)
どこを切っても「このブランドらしい」と思わせられることが、SNS時代の“共感される設計”に直結します。
4. 企業の“人格”が問われる時代
いま、私たちは企業をただの“モノを売る組織”とは見ていません。むしろ、人間のように見て、判断しています。
「この会社、誠実そう」
「なんかチャラくて信頼できない」
「このブランド、好きだけど最近ちょっと迷走してるよね」
「応援したくなる会社だよね」
このような語られ方は、まさに企業が“人格”として評価されている証拠です。

SNSの時代が「人格の透明性」を加速させた
SNSやレビュー文化によって、企業は“人々の目の前にいる存在”になりました。どんな広告を打つかだけでなく、どんな発言をするか、どんな態度をとるかまで見られています。
つまり、企業はもはや
「顔のない存在」ではなく、「日々観察されるキャラクター」になっている。
ここで人格に一貫性がないと、「言ってることとやってることが違う」と即座に信頼を失います。一貫した価値観・語り口・世界観を持つ“人格づくり”=ブランディングが必要になってくるのです。

人格があれば「好かれる」「許される」「選ばれる」
企業が“人格”として認識されているからこそ、以下のことが起こります:
サービスにミスがあっても「この会社なら仕方ない」と許される
競合より高くても「ここから買いたい」と思われる
社員が「この会社にいたい」と思えるようになる
これは、スペックや価格では得られない「人格による選ばれ方」です。
ブランドとは、人格をまとった存在になるための“設計”そのもの。

ブランディング=“人格形成”のプロセス
企業の人格をつくるとは:
人間の場合 | 企業の場合 | |
価値観 | 何を大切にしているか | ミッション/理念/スタンス |
見た目 | 外見・ファッション | ロゴ/色/ビジュアルデザイン |
話し方 | 声・口調・テンポ | コピー・ナレーション・トーン |
行動 | 習慣・言動・所作 | サービス内容/顧客対応/SNS発信 |
記憶 | 過去の言動 | ブランドの歴史/シリーズ広告/実績 |
こうしたすべてを統合的に整えていく行為=ブランディングです。

企業の“中身”が見える時代に、人格が最大の差別化になる
ロゴだけではなく、「どう語るか」
デザインだけでなく、「どう振る舞うか」
プロダクトだけでなく、「何を信じているか」
それらすべてを整え、体現し、伝える必要があります。
ブランディングは“人格形成”のプロセスであると言えるでしょう。
5. 小さな会社でもブランディングが武器になる

SNS時代は“スケール”より“スタンス”が価値になる
以前は、TVCMや雑誌広告など、ブランディングには多額の広告費が必要でした。だから「ブランディング=大企業の特権」だったのです。
でも今は違います。
SNSで思想や世界観を発信できる
noteやYouTubeで物語を語れる
D2CやECサイトで“らしさ”を体験として提供できる
“考え方”とや“語り方”が重視される時代に変わりました。
つまり、声の大きさではなく、声の“深さ”が届く時代。
これは、小さな会社にとって圧倒的に有利な土壌です。

顔の見えるビジネスだからこそ“人格=ブランド”になる
個人や小規模事業では、商品そのものよりも「誰がやっているのか?」が問われます。
代表の考え方
スタッフの雰囲気
店の空気感、言葉の選び方、SNSの発信スタイル
すべてがブランドの一部として“人格化”されて見られています。
つまり、「売っているモノ」以上に「その人が何者か」がブランド価値になるのです。
ブランディングは小さな会社も重要な資産になります。

“競合と比べられない状態”をつくることができる
資本力や人数では勝てないとしても、ブランディングによって以下のことが実現します:
値引きしなくても選ばれる(=共感で選ばれる)
他と比べられなくなる(=世界観が独自)
最初から“この会社に頼みたい”と言ってもらえる(=信頼の先回り)
小さくても“芯のある世界観”があれば、価格競争ではなく、関係性で選ばれるブランドになれます。

ブランディングとは“差別化”ではなく“独自化”である
大企業は「シェアを取りにいく戦略」をするけれど、小さな会社はそれよりも:
「うちにしかできないこと」に集中し、そこに共感してくれる人だけを集める
という戦い方の方が向いています。
思考・語り方・世界観が、最強の武器になる
ブランディングは、“派手さ”ではなく“深さ”で差がつく
つまり、「ブランドづくり=旗を立てること」。 人を大量に集めるより、“合う人とだけ深くつながるための設計”こそがブランディングです。
選ばれる理由は「機能」から「印象」へ
差別化は「スペック」から「価値観」へ
広告は「訴える」から「感じさせる」へ
「ブランド=意味 × 人格 × スタンス」の時代に突入しています。
まとめ:なぜブランディングがこれほど注目されているのか?
モノがあふれ、差がつきにくい
現代ではほとんどの商品が一定のクオリティを持っており、消費者は「どれを選んでもまあまあ良い」と感じがちです。これにより、商品選びは「性能」ではなく「共感できる価値観」に基づいて行われるようになりました。つまり、ブランドに対する印象が決め手となる時代が到来しています。
機能ではなく“意味”が求められている
消費者の購買決定は、感情的な印象が強く影響しています。商品自体のスペックではなく、そのブランドが提供する「意味」や「価値観」が購買において重要視されています。企業は「なぜその商品を作ったのか?」という意味を明確に伝えることで、共感を得ることができるのです。
SNS時代は「共感されるブランド」が強い
SNSの普及により、情報の信頼源が「広告」から「共感」にシフトしました。共感を得るためには、企業が「何を売っているか」よりも「なぜそれをやっているのか」を真摯に伝える必要があります。SNSは感情を共鳴させる場所であり、共感されるブランドは自然にファンを生み出し、広告費をかけずとも広がります。
企業の“人格”が問われる時代
SNSやレビュー文化によって、企業は「顔のない存在」ではなく、人格を持つ存在として評価されています。企業の態度や言動、一貫した価値観が信頼を生み出し、消費者に選ばれる理由になります。ブランディングは企業の“人格形成”そのものであり、その企業が何を大切にし、どのような姿勢を持つかが差別化要素となります。
小さな会社でもブランディングが武器になる
SNSの時代には、規模よりも企業のスタンスが重要です。特に小さな会社にとって、ブランディングは強力な武器となります。企業が自らの「らしさ」を発信し、独自の世界観を作り上げることで、大企業との競争においても有利に働きます。小さな企業こそ、自分たちにしかできないことに集中し、共感を得られるターゲットと深くつながる戦略が求められます。
結論として、ブランディングは単なる「差別化」ではなく、「独自化」であり、企業がどのように自らの「意味」「人格」「スタンス」を設計し、発信するかが、選ばれる理由となる時代に突入していると言えるでしょう。